風疹検査(風疹抗体価検査)とは?陽性の場合の妊娠や胎児への影響

カテゴリ:感染症

記事の種類:妊婦健診の検査項目

風疹検査の意味

風疹(三日はしか)は風疹ウイルスの感染により罹患します。
風疹ウイルスに感染すると、2~3週間の潜伏期間後に発症し、発疹やリンパ節腫脹、発熱などの症状が現れます。
但し10~20%は不顕性感染で症状が現れません

検査方法

風疹抗体価(風疹HI抗体価)検査を実施し、HI抗体価が8倍以上であれば抗体有り(陽性)と診断されます。
HI抗体価が256倍以上の場合は初感染の可能性があるため、更に問診と風疹感染診断検査を実施します。
HI抗体価が16倍よりも低い場合は、現在感染はしていないものの、抗体が少ないため、感染予防のために出産後(産褥早期)に風疹ワクチンの接種が推奨されます。(感染防御水準となるHI抗体価は40倍以上とされています)
※妊娠中は家族へのワクチンの接種や人混みを避けるなど、感染予防を心がける必要があります。

HI抗体価とは?

HIは赤血球凝集抑制反応を指します。
ウイルスは赤血球を凝集する性質があります。
一方、抗体はウイルス抗原と結合しウイルスによる赤血球凝集を阻害します。

このため、抗体が多ければ多いほどウイルスによる赤血球凝集抑制反応が多く起こります。
HIはこの性質を利用して、ウイルス抗原と抗体が結合する抗原抗体反応を起こさせる事で抗体の量を調べる検査方法です。

検査結果は8倍や16倍などで表されますが、これは血清を8の倍数で希釈したものを用意し、それぞれに一定の抗原量のウイルスを加えて、どれだけ高い倍率で希釈したものまで凝集が見られたかを表します。
より高い倍数の希釈で赤血球凝集抑制反応が見られるほど、抗体価が高い、つまり血中の抗体数が多いという事が分かります。

風疹感染診断検査

IgM抗体は早期に出現し、短期間で消失します。
それに対して、IgG抗体はIgM抗体よりも遅れて出現し、長期間持続する特徴があります。
このIgG抗体価の変化を見るペア血清HI抗体価検査や、最近感染したかどうかを調べる風疹特異的IgM抗体検査を実施し、確定診断を行います。

ペア血清HI抗体価検査

ペア血清HI抗体価検査は、急性期と回復期の2回、HI抗体価(IgG抗体価)を測定します。
2回目の測定は1回目の2週間後に実施します。
もし1回目の風疹ウイルスの特異的IgG抗体価が低値であっても、2週間後の測定でIgG抗体価が1回目の4倍以上であれば、風疹ウイルスに感染していると診断されます。

風疹特異的IgM抗体検査

風疹特異的IgM抗体は感染後数カ月から陽性となります。
このためIgM抗体が陽性の場合、数か月前に感染したことが分かります。

感染経路

飛沫感染や接触感染、風疹患者との濃厚な接触により感染します。
夫婦間での感染リスクがあるため、風疹ワクチンを接種していない場合は、妻だけではなく夫の接種も推奨されています。
特に谷間の世代と呼ばれる1979年4月2日~1987年10月1日生まれの人は、風疹ワクチンを接種していない可能性があるため注意が必要です。

治療法

HI抗体価が16倍よりも低い場合、非妊娠時(産褥後)に風疹ワクチンを接種します。
※風疹ワクチンは生ワクチンであり胎児への影響があるため、妊娠中には接種できません
なお、母子感染防止のため、接種後2ヶ月間は妊娠しないことが推奨されています。

陽性の場合にリスクのある疾患

妊婦が風疹に感染した場合、母子感染により児が先天性風疹症候群(CRS)を発症する可能性があります。

風疹感染時期と先天性風疹症候群の発生頻度

妊婦の風疹感染時期と先天性風疹症候群の発生頻度は以下となり、妊娠4~6週の初感染では母子感染率は100%です。
逆に排卵前や妊娠20週以降の初感染では母子感染はしません

風疹感染時期と先天性風疹症候群の発生頻度
罹患時期 発生頻度
妊娠4~6週 100%
妊娠7~12週 80~83%
妊娠13~16週 45~52%
妊娠17~20週 6%
妊娠20週以降 0%

先天性風疹症候群の症状

先天性風疹症候群では主に以下の症状が現れます。

  • 白内障
  • 緑内障
  • 色素性網膜症
  • 先天性心疾患
  • 難聴

公開日時:2017年10月15日 15:28:25
最終更新日時:2022年02月28日 22:26:38

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