癒着胎盤は出産時に胎盤を強制的に剥がす?剥離面からの細菌感染も
カテゴリ:怖い妊娠の合併症
記事の種類:妊娠特有の病気
癒着胎盤とは
癒着胎盤は一言で言うと胎盤が子宮壁から剥がれにくくなる症状です。
常位胎盤早期剥離とは真逆の症状ですが、何が危険かと言うと出産時の大量出血です。
癒着胎盤では、胎盤から出ている絨毛が子宮筋層に入り込み、子宮壁と強く癒着して剥がれにくくなっているため、出産時に胎盤を強制的に剥がす必要があります。
その際、胎盤の剥離面から大量に出血したり感染症を引き起こすことが最大のリスクとなります。
原因
癒着胎盤はなぜ起こる?
根本原因は不明ですが、上述したように胎盤の絨毛が深く子宮筋層に入り込み、強く密着することが原因です。
特に、前置胎盤を併発している場合は癒着胎盤の発症率は5~10%と高くなります。
また、子宮内膜増殖症の対処のために子宮内膜を過度に掻爬した場合、癒着胎盤の発症リスクが高まるとされています。
※掻爬は掻き取る事を意味しますが、子宮内膜を過度に掻爬することで子宮壁が異常に分厚くなる事が要因の1つになります。
更に、帝王切開既往もリスクを高める要因となり、帝王切開の回数に比例して癒着胎盤の発生率が高くなることが分かっています。
初産婦と経産婦
全癒着胎盤の内、経産婦の発症率は約80%と、統計的に初産婦よりも経産婦の発症率が圧倒的に高いことが分かっています。
これは経産婦の過去の出産による子宮の変形や子宮内膜の損傷などが要因になっているためと言われています。
リスク因子
- 前置胎盤
- 帝王切開
- 子宮内膜の過度な掻爬
- 経産婦(子宮の変形や子宮内膜の損傷)
症状
通常、自覚症状はありません。
前置胎盤の場合、事前に超音波断層法やMRIなどで癒着胎盤の診断検査を実施して、診断されることはありますが、通常は事前に癒着胎盤を発見することは難しく、分娩の段階になって判明することが多い疾患です。
起こり得る合併症
大量出血による出血性ショックや胎盤の剥離面からの感染症に加え、胎盤や卵膜が子宮内に残留した場合、子宮復古不全や悪露の発症リスクもあります。
子宮復古不全は収縮した子宮が元の大きさに戻るのが遅く、長い期間(2周間以上)、出血や悪露が続く症状です。
そのため、産褥期の処置も重要になってきます。
まとめると、主に以下の合併症のリスクがあります。
- 出血性ショック
- 感染症
- 子宮復古不全
- 悪露
予防方法
根本的な発生原因は分かっておらず、予測は難しく、確立された予防方法はありません。
但し、前置胎盤など、癒着胎盤を併発するリスクの高い疾患がある場合は、癒着胎盤を想定して、事前に大量出血に対する十分な準備を行った上で分娩に臨む事ができます。
公開日時:2017年06月14日 17:45:50
最終更新日時:2022年03月05日 19:14:32