HELLP(ヘルプ)症候群で同時に起きる3つの危険な疾患とは?
カテゴリ:怖い妊娠の合併症
記事の種類:妊娠特有の病気
HELLP症候群とは
HELLP(ヘルプ)症候群は、妊娠の合併症の中でも最も重篤な部類に入る疾患です。
HELLPは溶血性貧血(Hemolytic anemia)、肝逸脱酵素上昇(Elevated Liver enzymes)、血小板減少(Low Platelet count)の頭文字を取った造語で、これらの3つの疾患が同時に起きる症状で、母児共に非常に死亡率の高い疾患です。
母体死亡率は約25%、胎児死亡率(周産期死亡率)は、約37%にも登ります。
その理由として、治療方法は妊娠中断以外になく、多くの場合では母体救命のために帝王切開術での分娩となり、その時点の妊娠週数により早産となる場合が多いためです。
もちろん正期産の時期であれば胎児は健康な状態で生まれる可能性は高くなります。
原因
HELLP症候群はなぜ起こる?
発端となるのは、高血圧症などによる血管内皮の障害です。
まず、血管内皮障害によって血管の透過性が高まり、通常であれば透過しない物質が透過し、血液が濃縮され、更に血管の修復のために血小板が活性化されます。
この血管の修復のために、トロンボキサンA2と呼ばれる血小板の活性(血液が固まりやすくなる)や血管壁の収縮を引き起こす物質が大量に分泌され、血管攣縮(痙攣性の収縮)が起きます。
結果として血小板が減少し、冠動脈の攣縮を引き起こし、肝機能異常に至ります。
リスク因子
一般的に、高血圧症や多胎妊娠の場合にリスクが高まります。
特に、妊娠16週以降で妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)を合併している場合には、発症リスクが極めて高くなります。
HELLP症候群と妊娠高血圧症候群の合併率は実に90%にも上り、高血圧症に対して最も注意が必要です。
症状
妊娠末期から産褥3日くらいにかけて、突発的な腹痛や悪心、嘔吐などの妊娠高血圧症候群と同様の症状が現れます。
進行すると、常位胎盤早期剥離や肺水腫など重篤な疾患を引き起こします。
起こり得る合併症
- 末梢組織循環不全
- 肝機能異常
- 子癇
- 産科DIC
- 常位胎盤早期剥離
- 腎不全
- 肺水腫
- 胎児機能不全
予防方法
根本的な予防方法はありませんが、血小板数やAT活性(凝固阻止因子)、肝機能障害(AST/ALT/LDH)の検査を実施し、状況を注視しながら早期発見に務めることが最も重要になってきます。
公開日時:2017年06月20日 01:57:42
最終更新日時:2022年03月05日 19:13:59