血液型(ABO、Rh)検査とは?血液型不適合妊娠の胎児への影響

カテゴリ:血液系

記事の種類:妊婦健診の検査項目

血液型(ABO、Rh)検査の意味

血液型検査は血液型不適合妊娠の診断のために実施されます。

血液型には、A、B、OおよびRh型がありますが、この血液型は赤血球の抗原を調べる事で判別できます。
A型にはA抗原、B型にはB抗原、AB型にはAとBの両抗原があり、O型にはどちらの抗原もありません。
もし母親と胎児の血液型が異なる場合、胎児血球による母体感作が成立するため、胎児や新生児に溶血性疾患(赤血球が破壊される現象)が発生する可能性があります。

なお、実際には血液型不適合妊娠は、母親がRh(D)陰性(-)の場合にのみ発生します。(但し父親もRh(D)陰性(-)の場合は発生しません)

感作とは?

胎児の持っている血液型抗原(血液型の物質)が母体にない場合、母体側ではその抗原に対する抗体が作られます。
その抗体には免疫グロブリンG(IgG)と呼ばれる抗体が含まれており、それが胎盤を通じて胎児に移行した場合、胎児の赤血球が破壊されることになります。

検査方法

妊娠初期に実施する間接クームス試験による抗体検査で陰性の場合、妊娠18週頃、28週頃、36週頃に再度間接クームス試験を実施し、感作が起きていないかを調べます。
もし陽性(感作が起きている)の場合は、妊娠中では2~3週ごとに抗体価を測定します。(妊娠後期では2週間ごとに実施)

抗体価が16倍以上となった場合、子宮内で胎児溶血が起きていないかの確認として、羊水検査や胎児採血などで胎児貧血の有無を確認し、今後の治療や分娩方法や分娩時期などを検討します。
※もし胎児溶血が起きている場合、羊水中にビリルビン様物質が出現するため、羊水検査で発生有無を判別できます。

原因

溶血性疾患を引き起こす血液型不適合妊娠となるのは、Rh(D)陰性(-)妊婦に限られています。
Rh型にはRh(C)、Rh(D)、Rh(E)の3種類がありますが、Rh(D)が最も抗原性が強く、一般的にはRh(D)が陰性の場合をRh陰性と呼びます。

Rh(D)陰性となる原因

胎児がRh(D)陰性となるのは、父親と母親の両方がRh(D)陰性の場合のみです。
どちらか一方がRh(D)陽性(+)であれば、殆どの場合、胎児はRh(D)陽性になります。
日本人におけるRh(D)陰性の頻度は約0.5~1%です。
そのため、父親と母親の両方がRh(D)陰性の可能性は極めて低いと言えます。

母体感作が起きる原因

上述したように、母体がRh(D)陰性の場合、殆どの場合、胎児はRh(D)陽性になります。
つまり母体と胎児の血液型がRh-とRh+となり、一致しない(血液型不適合)ため、もし胎児の血液が母体の血液に混ざった場合、母体側で免疫グロブリンG(IgG)を含む抗体が作られます。
これを感作と呼びます。
感作により、母体で作られた胎児血液に対する抗体が胎児に入ってしまうと赤血球が破壊され、溶血性疾患が引き起こされます。

治療法

血液型不適合妊娠自体の根本的な治療方法はなく、感作の予防が重要になります。
血液型不適合妊娠の場合、妊娠中に感作が起きる確率は約1%、分娩時は約10%で、多くの場合は分娩時に起きます。
このため、感作の予防として、分娩後72時間以内に母体に胎児のD抗原を中和する作用のある抗D免疫グロブリンを投与し、母体でD抗体が作られるのを抑止します。

なお、妊娠28週前後の未感作妊婦に対しても抗D免疫グロブリンの投与が感作の予防に有効であることが分かっています。
但し予防率は100%ではありません。

血液型不適合妊娠の場合にリスクのある疾患

母体

直接のリスクはありませんが、もし一旦感作が起きた場合(D抗体が作られた場合)、今後の妊娠時に胎児溶血性疾患のリスクがあります。

胎児

感作が起きた場合、胎児溶血性疾患により以下の疾患のリスクがあります。

  • 貧血
  • 黄疸
  • 肝腫大
  • 脾腫大
  • 免疫性胎児水腫

公開日時:2017年10月06日 11:09:54
最終更新日時:2022年02月28日 22:28:07

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