尿蛋白の正常値(基準値)とは?妊娠時に尿蛋白が陽性になる原因

カテゴリ:腎尿路系

記事の種類:妊婦健診の検査項目

尿蛋白検査の意味

尿蛋白検査では、妊娠蛋白尿のスクリーニングのために随時尿を採取して尿蛋白量の測定を実施します。
尿蛋白が陽性の場合、一般的には腎機能障害(濾過機能低下)を示しますが、妊娠期では急激な血液量の増加に伴い異常値となる場合があり、これを妊娠蛋白尿と呼びます。
妊娠蛋白尿は妊娠高血圧と共に妊娠高血圧症候群の診断に用いられます。

検査方法

複数回の新鮮尿検体を採取し、試験紙法でアルブミンを検出し、2回以上連続して1+以上(30mg/dL以上)の陽性となった場合、蛋白尿と診断されます。
なおアルカリ尿や血液が混在していると偽陽性になるため、混在がないように採取する必要があります。

生理的蛋白尿と病的蛋白尿

過度の運動や精神的興奮、起立位、発熱などにより一時的に蛋白尿となる場合があり、生理的蛋白尿と呼びます。
尿蛋白が陽性となった場合、病的蛋白尿との鑑別が必要となり生理的蛋白尿であれば除外されます。

正常値(基準値)

30mg/dL未満

原因

妊娠すると循環血液量が増加し、心拍出量が増加します。
それに伴い末梢血管抵抗が低下(血が流れやすくなる)し、腎血漿流量(RPF)や腎臓の糸球体濾過率(GFR)が上昇します。
このため、妊娠初期から循環血液量と共に糸球体濾過率は徐々に増加していき、妊娠末期までには約30~50%程度まで増加します。
そして増加した血液量により、腎臓の糸球体での血液中のタンパク質の濾過が追いつかない場合、尿にタンパク質が漏れ出し、蛋白尿となります。

つまり妊娠時の蛋白尿は腎機能低下ではなく、急激な血液量の増加に伴う妊娠期特有のものである可能性があり、随時尿の検査のみでは蛋白尿の原因診断は行なえません。
このため、血圧の値も踏まえて、妊娠高血圧症候群か、尿路感染症、腎疾患かの鑑別を実施します。

治療法

尿蛋白が陽性の場合、まず原因の特定(血流量の増加もしくは腎機能低下によるものか)を行い、疾患に対する治療を実施します。
高血圧(収縮期血圧140mmHg以上、拡張期血圧90mmHg以上)を伴う場合、妊娠高血圧症候群の疑いがあるため、血圧や尿蛋白検査に加え、以下の検査なども実施し、早期発見と降圧薬の投与などの治療が大切になります。

  • 血算(ヘマトクリット値、血小板値)
  • 血液凝固機能(Dダイマー、PT、APTT、フィブリノゲン、血中アンチトロンビン活性)
  • 血液生化学検査(AST、ALT、LDH、ビリルビン、アルブミン、BUN、クレアチニン、尿酸、血糖)

異常値の場合に疑われる疾患

母体

尿蛋白が異常値の場合、以下の疾患が疑われます。

  • 妊娠高血圧症候群(高血圧も伴う場合)
  • 尿路感染症
  • 腎炎
  • ネフローゼ症候群

ネフローゼ症候群

ネフローゼ症候群は尿に多くのタンパク質が漏れ出し、血中のタンパク質が不足することで起こる疾患です。
分類としては、原発性の糸球体そのものの病変が原因である一次性ネフローゼ症候群と、何か別の病気による糸球体の病変が原因の続発性の二次性ネフローゼ症候群があります。
症状としては、むくみ(浮腫)、倦怠感、体重減少などがあります。
悪化すると、肺やお腹、心臓、陰嚢の周りに水が溜まり、肺水腫や陰嚢水腫を引き起こす場合もあります。
完治しにくい病気として知られています。

公開日時:2017年10月01日 20:38:02
最終更新日時:2022年02月28日 22:28:40

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