HTLV-1抗体検査とは?陽性時の妊娠や胎児への影響
カテゴリ:感染症
記事の種類:妊婦健診の検査項目
HTLV-1抗体検査の意味
HTLV-1(ヒトT細胞白血病ウイルス1型)は、白血病を引き起こす白血病ウイルスの1つです。
感染すると、40歳以上の感染者では、年間1000人に1人の割合で成人T細胞白血病(ATL)を発症します。
また、全HTLV-1感染者の内、約5%で白血病を発症します。
感染の仕組み
HTLV-1ウイルスはTリンパ球に入り込むと、ウイルスRNAが細胞のDNAに変換(逆転写)されてDNAに組み込まれます。
そして感染したTリンパ球が正常なリンパ球に直接接触することで感染が拡大していきます。
検査方法
HIVと同様に、血液を採取してゼラチン粒子凝集法(PA法)、酵素免疫抗体法(EIA)を用いてスクリーニング(偽陽性の可能性があります)を行います。
スクリーニングで陽性となった場合は、確定診断のためにウェスタンブロット法による2次検査を行います。
感染経路
最も多い感染経路は感染した母親の授乳による母乳感染です。
母乳中のHTLV-1ウイルスに感染したリンパ球を取り込むことにより新生児が感染します。
以下が主な感染経路です。
- 性行為(精液感染)
- 輸血
- 母子感染(母乳感染)
そのため、殆どの感染は母子感染によるものとなり、感染防止は母乳による母子感染の防止が重要になります。
※母子感染では母乳感染以外に子宮内感染、産道感染もあるものの頻度は低く、殆どが母乳感染によるものと考えられています。
治療法
現在は根治治療の方法はありません。
また、母子感染を完全に防止する根本的な対策もなく、以下のような感染を抑制する対策が取られます。
予防策を取らない場合の母子感染率は約20%であるのに対し、防止策を取った場合、感染率は約5%に抑える事ができます。
- 人工栄養(母乳による授乳をしない:断乳)
- 短期母乳(新生児に母親から受け継いだ抗体が存在する生後3ヶ月まで母乳授乳)
- 加工母乳(搾乳して冷凍保存した母乳を与える)
陽性の場合にリスクのある疾患
母体
- 成人T細胞白血病
胎児
母子感染した場合、将来的に成人T細胞白血病を発症(発症率5%)する可能性があります。
- 母子感染による子どもへのHTLV-1感染
- 成人T細胞白血病
公開日時:2017年10月09日 12:08:30
最終更新日時:2022年02月28日 22:27:36