経腹超音波検査とは?実施方法と結果から分かること

カテゴリ:超音波検査

記事の種類:妊婦健診の検査項目

経腹超音波検査の意味

妊娠の経過と共に胎児が成長して大きくなってくると妊娠初期のように経腟超音波検査では胎児の様子が確認できなくなってきます。
そのため、妊娠12週~妊娠中期以降(妊娠16週以降)では、経腹超音波検査を実施します。
経腹超音波検査では主に胎児形態異常や胎児発育、羊水、胎盤、臍帯の状態を確認します。

検査方法

経腹超音波検査ではお腹にゼリーを塗り滑りやすくした上で、経腹プローブをあてて超音波を発信し、返ってくるエコー信号を画像化して胎児や子宮内の状態を確認します。
経腟超音波検査よりも低い周波数の超音波を使用するため、広い範囲を確認できるのが特徴です。

検査で確認できること

経腹超音波検査では主に以下が確認できます。

  • 胎児形態(妊娠20週前後に1回実施)
  • 推定胎児体重(EFW)
  • 胎児発育状況
  • 羊水量
  • 胎盤位置
  • 臍帯

推定胎児体重

推定胎児体重は児頭大黄径(BPD)、腹囲(AC)、大腿骨長(FL)を用いて以下の公式で計算します。

EFW(g) = 1.07 x BPD3 + 0.30 x AC2 x FL

羊水量

妊娠中期以降は羊水は胎児尿が主体となり、一部を肺からの肺胞液が占めます。
羊水量を評価するために、羊水部分が最も広く描出される部分の羊水深度を測定します。
もしくは母体の腹部を上下左右の4箇所を測定し、各部の最大羊水ポケット(子宮腔の最も大きな箇所の直径)を測定します。
羊水ポケットの総和を羊水指数(AFI)を用いて羊水量を評価します。
AFIが5cmより小さい場合は羊水過少となります。
AFIが24~25cm以上、もしくは羊水ポケットが8cm以上の場合は羊水過多となります。

胎盤位置

胎盤位置の診断は一般的に妊娠20週頃に実施します。

前置胎盤

妊卵が子宮下部に着床して胎盤が内子宮口の全部または一部を覆った状態を前置胎盤と呼びます。
胎盤が内子宮口を覆う程度により、全前置胎盤、部分前置胎盤、辺縁前置胎盤に分類されます。
一般的には経腹超音波検査で内子宮口の位置と胎盤の位置を確認して診断しますが、胎盤が子宮後壁に付着している場合は確定診断が難しくなります。
その場合は、経腟超音波検査で内子宮口の位置を確認して確定診断を行います。

前置胎盤の発生頻度は全分娩中1.5%程度です。
前置胎盤のリスク因子として高齢、多産、帝王切開既往があります。
前置胎盤の妊娠へのリスクとして、分娩までの間に多量出血が発生する可能性があり、母児ともに生命の危険があります。
性器出血などが認められる場合、予防的管理入院となる場合があります。

低置胎盤

胎盤が子宮壁の低い位置に付着しているが、内子宮口は覆っていない状態、つまり前置胎盤の一歩手前の状態を低置胎盤と呼びます。
経腹超音波検査では子宮口と胎盤辺縁の距離を測り、2cm以下の場合は低置胎盤と診断されます。
低置胎盤も前置胎盤と同様に分娩時に大量出血になる可能性があります。
なお低置胎盤は自然に正常な位置に戻る場合があります。

臍帯

臍帯はいわゆるへその緒のことですが、長さや付着部の異常、臍帯血管や位置の異常、胎児への巻付きや捻じれなど、様々な異常が起きる場合があります。
一般的に妊娠20週頃(まだ羊水ポケットが広い時期)の経腹超音波検査において、胎盤の付着位置と臍帯起始部を確認します。

単一臍帯動脈

臍帯は通常、2本の臍帯動脈と1本の臍帯静脈で構成されています。
臍帯血管の異常として、臍帯動脈が1本しかない場合(単一臍帯動脈)などがあります。

付着部異常

臍帯の胎盤の付着部異常としては卵膜に付着する臍帯卵膜付着、辺縁に付着する臍帯辺縁付着(胎盤の端から2cm以内の箇所に付着)などがあります。
特に低置胎盤と卵膜付着の合併は臍帯血管が子宮口を横切る形になる場合があり、これは最も危険な臍帯異常となり、選択的帝王切開による分娩となる可能性があります。

臍帯巻絡

妊娠28週~30週くらいになると胎児への巻付き(臍帯巻絡)や捻じれ(臍帯茎捻転)が起きていないかを確認します。
臍帯巻絡は頸部巻絡の頻度が最も高く、臍帯血流障害や胎児循環障害による胎児機能不全のリスクがあります。

臍帯茎捻転

臍帯は通常は程よく捻じれた状態となっています。
この捻じれにより臍帯は伸び縮みや折れ曲がりに強く、臍帯血管の血流を阻害しにくくなっています。
しかし、捻れが強すぎる場合(過捻転)や捻れがない場合(無捻転)、血流障害を来す可能性があります。

検査で分かる異常

経腹超音波検査で異常が見られる場合、以下の疾患のリスクがあります。

  • 胎児形態異常
    • 無脳症
    • 全前脳胞症
    • 髄膜瘤
    • 嚢胞性頸部リンパ管腫
    • 心拡大
    • 横隔膜ヘルニア
    • 膣壁異常(膣壁ヘルニア、腹壁破裂)
    • 腎無形成
    • 尿道閉鎖
    • 四肢の欠損・短縮
    • 胎児水腫
    • 胎児腔水症(胸水、腹水、皮下浮腫)
  • 胎児発育異常
    • 胎児機能不全
    • 胎児仮死
    • 低出生体重児
    • 巨大児
  • 羊水異常
    • 羊水過多
    • 羊水過少
  • 胎盤位置異常
    • 前置胎盤
    • 低置胎盤
  • 臍帯異常
    • 単一臍帯動脈
    • 臍帯卵膜付着
    • 臍帯辺縁付着
    • 臍帯巻絡
    • 臍帯過捻転

公開日時:2017年10月22日 14:40:52
最終更新日時:2022年02月28日 22:26:05

また、妊娠線(肉割れ)の予防には妊娠初期からの予防が大切になります。妊娠線予防クリーム選びに迷っている方は是非こちらの記事も参考にしてみてください。

超音波検査に戻る

このページのトップに戻る